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事例・実績

SDGs
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 環境問題や社会貢献の文脈で語られることが多いSDGs。持続可能な社会を実現するため解決すべき課題(17目標・169ターゲット)を設定し、2030年をゴールとして、世界中で様々なSDGsへの取り組みが進行中です。
 本ページではSDGsを2030年の未来予想図(今後10年間のトレンド)として捉え、ビジネス面での活用により事業メリットを出している企業の事例を紹介します。
シンワラボ株式会社 代表取締役 加藤 シゲキ

事例 株式会社太平環境科学センター

■代表取締役 坂本 雅俊
■本社/福岡市博多区金の隈2丁目2番31号 TEL 092-504-1220
■試験所/福岡本社・長崎 ■営業所/大分・佐賀・熊本・北九州

会社概要

 太平洋環境科学センター株式会社は官公庁や民間から委託され、水道水・工場排水等の水質や排ガス・悪臭等の大気質の分析調査を行う会社である。
 昭和48年創業。従業員70名の「安全品質を計測する」プロ集団として、ダイオキシンやアスベスト分析と併せ、マイクロプラスティックの採集や分析方法の研究開発にも着手している。
 売上の45%は官公庁から。福岡市、熊本市をはじめ九州各県の公共のゴミ焼却施設や処分場の測定を受託するほか、設備メンテナンスや有害物質を抑制する燃焼方法を事業者へ指導する等、生活者の安全安心な生活環境を守る役割を担っている。
 坂本社長が就任した13年前より水質を自動分析する計測ロボットを自社で開発。「人力に頼った検査作業では正確性や継続性にも無理がある」と完全自動化への取り組みを続けている。
 まさにDX(デジタルトランスフォーメーション)による生産性の大幅な向上を果たし、その実績により経済産業省「2020地域未来牽引企業」として認定を受けている。
 

SDGs活動内容について

水質・大気質の分析調査を主に行っている
 「僕は宇宙が好きな天文少年だった。地球は奇跡的な星。この青い天体を未来永劫守って行く。そのために何をしなければいけないのか、SDGsは分かり易く教えてくれる。しかも弊社の事業と非常にマッチングが良い」坂本社長がSDGsの導入を決めた理由である。
 「SDGsから未来が見える。将来の事業の方向づけをしてくれる。まさに渡りに船だった。SDGsには最先端の情報も含まれ、当然そこにはビジネスチャンスがあると思った」
 坂本社長は3つのSDGsゴールを社内委員会の活動テーマとして選んだ。
 委員会は地球温暖化委員会、生産性向上委員会、ジェンダー平等委員会の3つ。毎週木曜夕方、就業時間内に各委員会は開催される。
 メンバーによる自習タイムも設定しており、学んだことをメンバー間で教え合うことで委員会活動のレベル向上を図っている。
取引先に配布した自社オリジナルのエコバック
【地球温暖化防止委員会】
気候変動に具体的な対策を
 地球温暖化メカニズム、温暖化が進行するとどうなるか、温暖化は防げるか。各種データを踏まえ、当社は何ができるのか。
 13年前よりCO₂削減のため、電気やガソリン使用量の年5%削減を目標として設定。オフィス照明のLED化、ガソリン車からハイブリッド車への入れ替え、今は電気自動車の導入を計画している。
 また、SDGs活動のシンボルとして、オリジナルエコバックを作成。取引先に活用して貰いレジ袋の削減にも取り組んでいる。今では水質検査等の持ち込みはオリジナルエコバック活用が完全に定着した。
【生産性向上委員会】
働きがいも経済成長も
 生産性とは何か、欧米と日本の比較、自社の生産性向上の取り組み。手順書やマニュアルの整備、RPA(※1)拡充について、チームメンバーによる研究が日々行われている。
 労働集約型産業である環境分析業界では、その高コスト体質や慢性的な長時間労働に苦しむ会社が多い。この課題を克服すべく、国内初の完全自動細菌検査装置等の自社開発に成功。長時間労働は無くなり労働環境を劇的に改善するとともに、生産性(一人当たりの売上高)は自動化前の2倍となり収益率が大幅に改善した。
(※1)RPA:ロボティック・プロセス・オートメーションの略。人間の代わりに業務をこなしてくれる自動化ツール。
【ジェンダー平等委員会】
ジェンダー平等を実現しよう
 更なる生産性の向上、社員の働きがい・やりがいを実現する為、SDGsの象徴的な活動として「ジェンダー平等」委員会は活動している。
 生産性の向上において、IT・ロボット導入だけで解決しないのが企業風土の改善。
 「うちの仕事は女性の方が向いている。だからこそ、女性に長く働いて貰える仕組み作りが必要だと感じている。」
 坂本社長は先入観や悪しき習慣の抜本的な見直しによる一層の生産性向上を見据えている。
 男性と女性では労働時間の長さに象徴される働き方に性差が残る。家事や育児のため1分でも早く仕事を切り上げて帰りたい女性社員。一方、遅くまで残りがちな男性社員。
 性差に関係なく労働時間を短縮し、更なる生産性の向上を果たすためSDGsジェンダーテーマによる社内の意識改革に取り組んでいる。

SDGsによる変化

 坂本社長就任の13年前、会社は男性社員が大半だった。今では女性社員の人数が逆転したことで管理職への登用も積極的に進められている。
 管理部門を束ねる高橋取締役は10年前にパート社員として入社。正社員へ盗用された一期生でもあり、今では取締役管理部長・お客様満足推進室長へ就任。
 「高橋取締役はリーダーシップに優れ、困っている人や苦しんでいる人を放っておかず、非常に義侠心が強い人物」坂本社長から高く実力を評価されている。
 こうした女性活躍の象徴はあるものの、ジェンダー平等の意識改革はこれから。SDGs活動により社員の潜在的な能力を発揮させ、一層の生産性向上を目指している。
 活動全体のファシリテーター役の龍さんからは「ジェンダー平等の取り組みで男性にも働きやすい環境が整ってきた。女性社員の活躍や女性管理職が増えたことで男女ともに勤続年数が長くなってきた」と社内の変化に手ごたえを感じている。
 高橋取締役も「SDGsにより、より働きやすい職場環境を整え、女性だけでなく高年齢になる社員がより長く働ける企業風土を作る」と今後の抱負を語る。

今後の展開について

 SDGsの取り組みから生まれた新ビジネスが海洋漂流物の「マイクロプラスティックゴミを回収するプロジェクト」である。
 海や湖沼・河川の水質調査を目的に自社開発した「水上ドローン」をマイクロプラスティックのサンプル採集に転用。長崎大学との共同研究がスタートした。
 海外から大量に漂着するプラスティックゴミ。微細なマイクロプラスティックをエサにした魚を人間が食すことで人の体内からもマイクロプラスティックが見つかり、添加の有害物質による健康被害が懸念されている。
 大学との共同研究から刺激を受け、マイクロからナノレベル(※2)への挑戦が始まり、社長を先頭に勉強会を立上げ、新たな技術開発への取り組みを開始した。
 (※2)ナノ:1ミリ(㎜)の1000分の1が1マイクロ(μ)、その1000分の1が1ナノ(n)
目標とする地点へ自動操縦で航行した水上ドローンは、網を下ろして水面付近に漂うマイクロプラスチックを採取

取材ノート

シンワラボ株式会社 代表取締役 加藤 シゲキ

経済産業省 九州経済産業局 SDGsパートナー機関 健康経営エキスパートアドバイザー
 今回の取材で非常に印象に残ったのが「経営者の一番の役割は未来の戦略を考えること」との言葉だった。坂本社長は”先読み”の重要性を何度も強調されていた。
 まさに時代を先取りしたRPAの導入やDX推進、働き方改革が労働生産性・売上・収益を大幅に引き上げる原動力となっている。
 そこで確定している未来を見通してみると、国内では東京オリンピック・パラリンピックに続く大イベントとして2025年開催の大阪・関西万博が控えており、メインテーマはSDGs「いのち輝く未来社会のデザイン」となっている。
 このSDGsゴールの中間点へ向け、企業、学校、家庭での様々なSDGs活動やビジネス活用が一段と加速して行くことが予測される。
 身近なところでも熊本県が4月にSDGs登録制度を開始。県内団体・企業のSDGs活動を認定する仕組みとしては長野県に次いで2県目で予想を上回る申請数を受けている。
 今回の締めとして2030年SDGsゴールのさらに先の未来予想図を一つ。「内閣府2050年ムーンショット目標」先端技術による驚くべき未来社会デザインがリアルに描かれている。
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